こんにちは。木蓮経営法律事務所の弁護士松坂典洋です。
先日、「カフェラテ1杯を盗んだ非常勤職員は懲戒免職 熊本市が職員4人を懲戒処分」との報道がありました。(2021年2月18日NHKWEB等)
熊本市が、コンビニエンスストアで、カフェラテ1杯を盗んだ職員を懲戒免職(懲戒解雇と同じ意味)にしたのです。
具体的には、非常勤職員は、コンビニエンスストアで、通常サイズのコーヒー100円を購入したにも関わらず、ラージサイズのカフェラテ200円を容器に注ぎ盗んだということです。
皆さま、この処分をどのように受け止めましたか。
・カフェラテのサイズを間違えただけなのかもしれないのに、免職(解雇)は重すぎる!
・現行犯逮捕までされてるから免職が相当だ!
・100円だろうが窃盗は窃盗。公務員だから当然!
ネット上でも意見が割れていましたね。
様々な意見があると思いますが、公務員の懲戒免職処分は、懲戒免職により、安定した仕事を失うことになるため、裁判で争われることが非常に多いです。
一般の会社でも、解雇などの重大な懲戒処分は争われることが多く、私も数多く経験してきました。
したがって、経営者としては、懲戒解雇、停職など重大な懲戒処分をする場合、従業員からその処分の有効性を裁判で争われる可能性があることを想定して処分しなければなりません。
懲戒処分をする場合に次の4つのポイントに注意しましょう。
【1】 懲戒処分の対象行為は何か
【2】 就業規則等の根拠条項は何か
【3】 どのような処分が相当か
(戒告、譴責、減給処分、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇)
【4】 手続は適正か(反論の機会を与えること)
【1】 懲戒処分の対象行為は何か
この点については、対象行為を証明できる資料が揃っているか確認しましょう。
噂や思い込み、あるいは、事実であっても証拠なしに処分すると裁判で処分が無効となってしまいます。
【2】就業規則等の根拠条項は何か
必ず、就業規則等のどの条項に該当するのか確認しましょう。
熊本市は、処分の根拠となる地方公務員法に加えて、「指針」を設けていました。
国や地方公共団体、一部の大企業ではこうした指針を定めており、その指針に基づいて処分をしています。
熊本市の指針には、「他人の金品を盗んだ職員は免職又は停職とする」と定められているため、指針の上記条項に基づいて免職(解雇)処分したのです。
【3】どのよう処分が相当か
熊本市の案件でも、免職(解雇)は重すぎるのではないかと感じる方が多いかもしれません。
熊本市は、当該職員が気に入らないからとか、窃盗だからけしからんという単純な理由で停職ではなく、免職(解雇)を選択したわけではありません。
熊本市は、以下の指針の基準に照らして具体的に判断して停職を選択したと説明する準備をしているはずです。
指針第1、2項
「具体的な処分内容の決定に当たっては、
(1)非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか。
(2)故意 又は 過失の度合いはどの程度であったか。
(3)非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、
その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか。
(4)他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか。
(5)過去に非違行為を行っているか。
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め
総合的に考慮の上判断する ものとする。」
熊本市の職員は現行犯逮捕されていますので、同事実はもちろん、報道されていない事情を含めて免職(解雇)を選択したのだと思います。
熊本市などの指針記載された基準、判断要素は、一般の会社でも懲戒処分に関する規則を定めたり、実際に処分するにあたり参考になります。
また、一度処分するとその処分は前例となって、後の類似案件の処分に影響しますので注意が必要です。
懲戒処分をする場合には、後日、有効性を争われないように、事前に必ず弁護士に相談することをお勧めします。
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